陽炎

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時間通りに店に入ると、鏡花ちゃんはもう先に来て待っていた。 紺色のパーカーにデニムのショートパンツ。 寒色系の服装に、飴色の髪が映えていた。 「あ、夜ちゃーん」 手招きされ、奥の席へと向かう。 テーブルの上には、ナポリタンとメロンソーダが、まるでクリスマスの装飾のように並べられている。 彼女はそれらを自分の側へと引き寄せて、わたしを正面の席に促した。 「ちょこっと、久し振りだね」 「…うん」 「ちゃんとごはん食べてる?風邪引いたりしてない?」 「大丈夫。心配かけて、ごめん」 「一応、元気そうでよかった」 ほっとしたように息を吐く鏡花ちゃん。 続けて彼女は言った。 「夜ちゃんとのこと、夏君から、大体聞いたんだ。付き合い出したこととか、何かこじれちゃってることとか」 「そう…」 誤解しないでね、と彼女は胸の前で大きく手を振る。 「夏君から言ったんじゃなくて、あたしが聞き出しただけだから」 それは別に、どちらでも構わなかった。 付き合っていることを秘密にしていたのは、ただ単に恥ずかしかったというだけのことで、本気で知られたくなかったわけじゃない。 こじれているという件についても、同様だった。 「夜ちゃん、夏君と別れようなんて、思ってないよね?」 そうであってほしいと、確認するかのような問いに、わたしは即答することができなかった。
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