倉橋和也の日常Ⅰ

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正直にいうと、今の電話は動揺しっぱなしだった。 その証拠に、俺まだコートも脱いでない。 仮にここが自分の部屋なら、三月といっても一日留守にしてたなら冷えてるからね。 エアコンが効いてくるまでは、こんな格好でうろうろしたりもするけど……。 ガバッと起き上がった俺は、入口横の空調のつまみを「弱」に切り換える。 このホテル、値段もサービスも満足なんだけど、この暖房を停止できないのだけが不満。 汗ばむ額を軽く拭い、漸く脱いだ厚手のコートをクローゼットへ。 ついでにスーツの上着も、軽くブラシをかけた後その隣に引っ掛ける。 襟元を寛げ再びベッドに寝転がれば、昨日よりも馴染んだように思えるシーツ。 洗い立ての糊が効いたのも悪くないけど、俺は少し苦手だったりする。 だから、一泊目はなかなか落ち着かなくて、 まあ、うん。 ホントに今更だけど、 つい…………ね。
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