748人が本棚に入れています
本棚に追加
鮮明だった光の粒が、再びゆっくりとぼやける。
少しだけ和らいだ夜の色を分厚いカーテンで遮る。
窓辺に立つとやっぱり寒い。
そういえば、帰り道に見た電光掲示板はきっかり0℃を表示していて、
このホテルの並びの角にある都市銀行の前で、俺はマフラーを忘れてきた事を改めて悔やんだんだ。
ああ、そうだ……それから。
ふと思い出すのはコートのポケットの中身。
再びクローゼットを開けると、乾いた木の匂いが鼻先を通りすぎる。
取り出したのは、すっかり固くなった使い捨てカイロの白い塊。
冷たいとこまでは行ってないけど、暖かさはまるでない。
何となく似てる、かな。
落ち着かなくて電話してみて、結局また落ち着かない。
"まだ"落ち着かない。
いや、もう落ち着けないのかもしれない。
声を聞いて話をして、寒さは感じないけど、暖かさも感じない。
そこに有ったのは――――
最初のコメントを投稿しよう!