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14
雨の日から一週間が経った。
久保は相変わらず固い表情だったが、万葉のおかげで少しずつだが笑顔が戻り始めた。
「――久保セン、立ち直ったのかな?」
「いやぁ、あれはまだ無理してる顔でしょ?」
小早川と新藤はひそひそ話している。
「うまく行くかな?」
「……どうかな。でも、宮原と篠崎にも声は掛けてある。」
「――柔道部に頼んじゃいましたか。」
しかし、そのひそひそ話は久保の注意で止まった。
「……そこの二人、授業中にお喋りとは、いい度胸だな。」
「げ。」
「お前ら、後で機材の片付けの手伝い決定な。」
「――酷いっ! 横暴!」
「横暴で結構。」
丁度、授業の終了を知らせるチャイムが鳴る。
「……じゃあ、今日はここまで。宿題、忘れるなよ。日直、挨拶を。」
「気をつけ、礼!」
生徒が頭をペコリと下げて、バラバラと部屋を出ていく。
休み時間になり、小早川と新藤は示しを合わせたように互いに頷いた。
「ほら、小早川、新藤! 諦めて、これを運ぶの手伝え。」
そう口にしながら、ガタガタと授業で使ったプロジェクターを片付け始める。
「……運ぶのは構わないけど、小言は勘弁。」
「ほう? 小早川はプラスで説教だな。」
「ま、ま。久保セン、これを視聴覚室に片付けに行けば良いんでしょ?」
「……まあな。椛沢先生に返しに行くんだ。」
にっと新藤は笑うとプロジェクターを抱えて久保の左隣を歩く。
小早川もケーブル類を持って久保の前を歩いた。
「……あ、おい。」
小早川がおもむろにカウンセラー室の扉を開ける。
眉を顰めて久保がその後を追った。
「おい、小早川! 何を逃げてんだよ。……とぉっ?!」
今度はドンッと新藤に押されて、カウンセラー室に押し込められる。
「おいっ!」
ピシャッと扉が締まり、新藤が「ごゆっくり」と笑う。
前の方のドアは、小早川に閉じ込められた。
「――小早川ッ!」
「昼休み時間中は、亜希ちゃんセンセ、貸し切りだからさッ!」
「……いいから、出せよッ!」
再び後ろの扉を開けようとするが、こちら新藤ががっちり押さえ込んでいる。
「――新藤ッ!」
「久保セン、勘弁して!」
「閉じ込められて、そんな事、出来るか!」
二人は約束していた宮原と篠崎にも声をかけて、ドアを開けさせない。
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