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 雨の日から一週間が経った。  久保は相変わらず固い表情だったが、万葉のおかげで少しずつだが笑顔が戻り始めた。 「――久保セン、立ち直ったのかな?」 「いやぁ、あれはまだ無理してる顔でしょ?」  小早川と新藤はひそひそ話している。 「うまく行くかな?」 「……どうかな。でも、宮原と篠崎にも声は掛けてある。」 「――柔道部に頼んじゃいましたか。」  しかし、そのひそひそ話は久保の注意で止まった。 「……そこの二人、授業中にお喋りとは、いい度胸だな。」 「げ。」 「お前ら、後で機材の片付けの手伝い決定な。」 「――酷いっ! 横暴!」 「横暴で結構。」  丁度、授業の終了を知らせるチャイムが鳴る。 「……じゃあ、今日はここまで。宿題、忘れるなよ。日直、挨拶を。」 「気をつけ、礼!」  生徒が頭をペコリと下げて、バラバラと部屋を出ていく。  休み時間になり、小早川と新藤は示しを合わせたように互いに頷いた。 「ほら、小早川、新藤! 諦めて、これを運ぶの手伝え。」  そう口にしながら、ガタガタと授業で使ったプロジェクターを片付け始める。 「……運ぶのは構わないけど、小言は勘弁。」 「ほう? 小早川はプラスで説教だな。」 「ま、ま。久保セン、これを視聴覚室に片付けに行けば良いんでしょ?」 「……まあな。椛沢先生に返しに行くんだ。」  にっと新藤は笑うとプロジェクターを抱えて久保の左隣を歩く。  小早川もケーブル類を持って久保の前を歩いた。 「……あ、おい。」  小早川がおもむろにカウンセラー室の扉を開ける。  眉を顰めて久保がその後を追った。 「おい、小早川! 何を逃げてんだよ。……とぉっ?!」  今度はドンッと新藤に押されて、カウンセラー室に押し込められる。 「おいっ!」  ピシャッと扉が締まり、新藤が「ごゆっくり」と笑う。  前の方のドアは、小早川に閉じ込められた。 「――小早川ッ!」 「昼休み時間中は、亜希ちゃんセンセ、貸し切りだからさッ!」 「……いいから、出せよッ!」  再び後ろの扉を開けようとするが、こちら新藤ががっちり押さえ込んでいる。 「――新藤ッ!」 「久保セン、勘弁して!」 「閉じ込められて、そんな事、出来るか!」  二人は約束していた宮原と篠崎にも声をかけて、ドアを開けさせない。
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