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『理紗に言われたから、やって来ました』
……そう言えばいいの?
そんなの、姉としてのプライドが許さない。
それにやっぱり謝るのなら、理紗に言われてくるのは間違ってると思う。
だって私の意志じゃないもの。
半ば無理やり理紗に、“行け!” って脅されてやって来たんだもの。
でも……私のせいで昼食が抜きになったのは、事実だし。
やっぱり謝るべきかしら?
――ガチャッ。
私が門の前で色々考えてると、いきなり玄関が開いて驚いた様子の彼が姿を現した。
「お姉さん? こんな時間にどうしたんですか?」
彼の顔を見た瞬間、涙腺の弱い私は目頭が熱くなってくる。
青ざめている唇は、言葉を発することを邪魔してきた。
「それに何で、靴を履いてないんですか?」
彼は門を開けて、意識的に私の足元を見ている。
「な、何でもないのよ……」
やっと搾り出した声は、震えて擦れ気味の変な声だった。
“何でもない”
とは言ったものの、髪は乱れ靴は履いていない。
顔は青ざめて、財布しか持ってない風貌。
“何でもない訳ない”
いくら鈍感な彼でも、そう思うだろう。
けど私はそれらを悟られないように、彼に背を向けて言葉を続ける。
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