10. もつれる糸

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少しすると、足音がこちらに向かってくる。 聴こえる感じでは、一人分の足音。 きっと高梨だろう。 そう解ってはいても、私の足は凍りついたように動かない。 今は出て行けない。 高梨に会っても、冷静になれない私が高梨に何を言うか分からない。 カンカンカン、と階段を昇っていく音がして、廊下を歩いていくのが聴こえる。 まだ胸がドキドキして、次の行動がとれない。 ちょっとして、漸く動悸が収まり始めた頃。 ふいに、足音がまた近づいてきて、階段を早足で駆け下りるのが聴こえてきた。 そーっと壁の端から音がしたほうを覗き見ると、 レジ袋を持った高梨の姿。 アパートの敷地から出て、道路まで行ってキョロキョロしている。 ー私がドアノブにかけてきたレジ袋、だね。 追いかけてくれてる…の?
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