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久しぶりの高梨の部屋。
前と変わらない部屋の匂いになんとなくホッとする。
つい部屋をちょっと見回していると、
「初めてじゃあるまいし、何キョロキョロしてんの。座ったら。」
高梨は頭をポリポリ掻きながらソファへ座るよう促してくるので、
少し遠慮がちに、私はソファの端へ腰を下ろした。
暖房をつけたばかりの部屋は寒くて、コートを脱げずにいると、
突然高梨の手が頬に伸びてきて触れた。
思わずビクッと身体が揺れる。
「冷たっ!どんくらい待ってたんだよ?」
高梨は呆れたような顔をして、今度は私の手を取った。
「…そんな待ってないよ?10分位じゃない?ほら、私冷え症だから。」
たはは、と情けない顔をしながらちょっとだけウソをつく。
キュッと私の手を握りながら、疑いの眼差しを向けて来るけど、それには気付かないふりをした。
握られた手から、温かさが染みてくる。
少しの沈黙の後、高梨は私から手を離してキッチンへ向かった。
「ビールよりあったかいのがいいよな?お湯割にする?」
指の先まで冷え切った私に、
キッチンからそう声をかけてくるので、
「うん、確かにその方がありがたいや。」
と答えて、グラスが運ばれて来るのを待った。
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