10. もつれる糸

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久しぶりの高梨の部屋。 前と変わらない部屋の匂いになんとなくホッとする。 つい部屋をちょっと見回していると、 「初めてじゃあるまいし、何キョロキョロしてんの。座ったら。」 高梨は頭をポリポリ掻きながらソファへ座るよう促してくるので、 少し遠慮がちに、私はソファの端へ腰を下ろした。 暖房をつけたばかりの部屋は寒くて、コートを脱げずにいると、 突然高梨の手が頬に伸びてきて触れた。 思わずビクッと身体が揺れる。 「冷たっ!どんくらい待ってたんだよ?」 高梨は呆れたような顔をして、今度は私の手を取った。 「…そんな待ってないよ?10分位じゃない?ほら、私冷え症だから。」 たはは、と情けない顔をしながらちょっとだけウソをつく。 キュッと私の手を握りながら、疑いの眼差しを向けて来るけど、それには気付かないふりをした。 握られた手から、温かさが染みてくる。 少しの沈黙の後、高梨は私から手を離してキッチンへ向かった。 「ビールよりあったかいのがいいよな?お湯割にする?」 指の先まで冷え切った私に、 キッチンからそう声をかけてくるので、 「うん、確かにその方がありがたいや。」 と答えて、グラスが運ばれて来るのを待った。
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