10. もつれる糸

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「有田さんと上手く行きそうなんでしょ?」 いつも余裕のある高梨からは考えられないくらい、弱々しい問いかけに、私はどう答えればいいのか考えあぐねてしまう。 「オレに気なんか遣うなよ…無理矢理身体を奪うような奴だよ?」 あまりにも自分を卑下する高梨に黙っていられなくなって重たい口を開いた。 「なんでそんな言い方するのよ?私は、無理矢理奪われたわけじゃないでしょ? この間のはビックリしたけど…、高梨がそこまで自分を責めることないじゃない!」 抱きしめていた身体を離して、高梨を真っ直ぐ見つめ、尚も続けた。 「私が高梨の優しさに甘え過ぎてたの。…ごめん。」 ペコリと頭を下げて、再び高梨を見ると、大きな溜息を吐きながら少し遠くを見つめていた。 そしてまた高梨が口を開く。 「…オレね、さっきのコに好きって言われたんだ。彼女がいてもいいんだって。まぁ実際はいない訳だけど。」 ーさっきの。 今この状況で出てきた高梨の言葉に少なからずズキン、とまた胸は痛む。 「二番目でもいいって、健気だなって思うのと同時に可哀想に思えちゃって…答えに窮してたら、さ。キスされちったよ。」 はは、と笑って髪を手でくしゃくしゃにする仕草が、 何か迷いを含んでいるように見えた。
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