10. もつれる糸

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気づくの、遅かったね。 私は…いつの間にか、高梨のいる生活が、好きになってたんだよ。 アンタの、甘い笑顔が毒にも見えたのは、私が予防線を張ってたから。ある線を超えないように警戒してたから。 なんで素直に飛び込んで行けなかったんだろう。 さっき、高梨にキスしたコは。 2番目でもいいからって、思い余ってキスできちゃうくらい、好きな気持ちをまっすぐぶつけたんだ。 あんなに素直に積極的になれるのは若さゆえ、かもしれないけど。 28の私には、そんなことがすごく、羨ましくて…眩しくさえもあった。 素直になれれば、ラクなのに。 どうして自分の気持ちに蓋をしちゃうんだろう。 蓋をして、その気持ちが風化するのを待つのがクセになってる。 それが大人になることだって言い聞かせるみたいに。 本当はただ、自分が傷つきたくないだけー。
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