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「まだ決定的な言葉はないんだね?」
美咲が静かに口を挟む。
私はそれに頷いた。
「前にね、お互い過去は過去として、"今"の自分達を見ようよって話はしたの。お互いね、忘れられない特別な相手だったから…。」
俯いたまま話すと、2人がじっとこちらを見つめているのを感じた。
「今また、好きになりそうだから?それが昔の想いを引きずったものにならないようにしようってこと?」
菜央の"読み"はホントに鋭い。
「…そういうことだと思う。私がこの間菜央にも言ったように、彼も引っかかってたんだよ。昔の恋を引っ張り出すのは…。」
「…似た者同士なんだね。」
美咲が呟き、そうなのかな…と私は首を傾げた。
「いやでもさ、それ、かなり難しいでしょ!昔の事を思い出さずにはいられないだろうし。
やっぱり好きだな、って思えるなら難しい事考えないで、好きって言えばいいのに。」
あっけらかんと菜央は言う。
確かに、私達は考え過ぎなのかもしれないけど。
「…好き、なんて、大人になればなるほど言えなくならない?」
私はポツリと呟いた。
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