僕のための君

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「山岡さん! 好きです!!」 外だろうが気にする様子もなく、笹倉が告白する。 「あ~、はいはい」 ご苦労なこって。 「一緒に帰りましょう!」 そう言って笹倉は俺の鞄を当たり前のように持つ。 山岡は男とつきあってる、と噂が流れ、女が寄って来なくなった。 こんなこと言っちゃ失礼なんだろうが、正直助かる。 それだけでも、この男とつきあってる価値はあるだろう。 つきあってる、と呼べるのかは謎だが。 懐いているなあ、とは思うが、何も求めてこない。 鬱陶しいし、邪魔に思うが、ただじゃれついてくるだけで。 どっか連れてってとか、私のこと好きなのとか、メンドーなこと言わないところがいい。 まあ、今までの女に比べたら好きなほうだと思うけど? 「山岡さん、手、繋いで、いいですか?」 そんなお伺いをたてながらも手はすでにがっちり握られている。 「…………」 別にいいけど。 減るもんでもないし。
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