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ぺこりとお辞儀をしたところで、 先輩のもとに勢いよく ボールが飛んで行き、 わたしは思わず「あ」と 声を上げた。 先輩は身体をくの字にへこませ、 不格好な体勢で 何とかその球を避けた。 それを見た他の部員たちが グラウンドでケラケラ 笑い転げている。 見ると、その球を蹴ったのは サッカー部のコーチ ――うちのクラスの担任の榊 (さかき)先生のようだった。 本当かどうかは分からないけれど、 Jリーグからの誘いを蹴って 教員になったと言うだけあって、 コントロールは完璧だ。 何かを怒鳴りながら、 さらにもう一球、 板東先輩に向かってボールを蹴る。 たぶん練習に集中しろと 責められているのだろう。 ペコペコ謝る先輩の姿に、 コートでは再び 大爆笑が起きていた。
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