-2-

6/12
前へ
/90ページ
次へ
「もう暗くなるから、 早く帰った方がいいんじゃない?」 少しつり上がった大きな瞳が、 冷たくわたしを射る。 「……はい……」 ぺこりと頭を下げ、 「さようなら」と挨拶したが、 返事は無かった。 踵を返し、ぎくしゃくと歩き出す。 蔑むようなくすくす笑いが、 どこまでも追いかけてくるような 気がした。 やっと校門を出たところで、 無意識に止めていた息を 大きく吐き出す。 ……気にしない。大したことじゃない。 呪文のように心の中で呟き、 自分に言い聞かせる。 ――何も悪いこと、してないんだから。 耳に残った嫌な笑い声を振り払おうと、 足を速めた時だった。
/90ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1069人が本棚に入れています
本棚に追加