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「萌ちゃーん」 振り返ると、サッカーウエア姿の 板東先輩がこちらに向かって 走って来るのが見えた。 すぐに追いつき、 息を弾ませながら ウエアのポケットを探る。 「よかった間に合って。 今、ちょうど休憩で……。 ……あれ、……おかしいな」 先輩はしばらくもぞもぞしてから、 やっと目的のものを探り当て、 こちらに差し出した。 「これ、俺のなんだけど。 もしよかったら」 「……」 受け取るのに躊躇していると、 先輩は困ったように笑って わたしの右手を取った。 手のひらに乗せ、優しく握らせる。
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