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「今日は職員室で聞いてるから。
いつもの調子で、ね」
澄ました顔でそう言って、
背中を向けて歩き出す。
――もう……っ。
先生の背中を見送ってから、
わたしは荷物を抱え直し、
放送室に向かって走り出した。
『いつもの調子で、ね』
「……」
緊張が、少しだけ和らいだ気がした。
イジワルばかりするかわりに、
先生はいつも必ず、
少しだけ優しさをくれる。
両頬も熱を持っているけれど、
先生の手が触れた指先の方が
ずっと熱かった。
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