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渡り廊下に一歩足を踏み出すと、 身を切るような冷たい空気が 頬を刺した。 手すりから手を伸ばせば 届きそうなところに、 葉を全て落とした枝が 寒々しく揺れている。 これは、若い桜の木だ。 今はもの悲しい姿を 晒しているけれど、 春にはきっとまた、 綺麗な花を咲かせてくれる。 ……さむ……。 わたしは身を縮めるようにして 渡り廊下を足早に通り抜けた。 突き当りを左に折れ、 放送部室の見慣れたドアの前に立つ。 ノックをする前に携帯を取り出し、 念のためもう一度確認してみたが、 やはり新しい受信メールは無かった。 ……万優架……。 いったい、どうなっちゃってるの?
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