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「好きだから一緒にいるのが辛い、だから別れる。…もし私だったら、どんな事があっても別れないけどな。だって別れる方のが辛いじゃん」
ミチルが揚げたてのポテトを頬張りながら口を尖らせる。
「翔ちゃんにとっては、側にいる大切な人を、疑いながら一緒にいる方が辛いと思ったんでしょ。翔ちゃんだって簡単に別れを決意したはずないよ」
唯が生中のジョッキから口を離し、ため息混じりに呟いた。
「でもさ、ここで綾子と別れたら結城先生に完全に取られるって考えないのかな?」
「その事も考えたでしょ、勿論」
「それってめちゃ悔しくない?絶対あの男には渡さんっ!って意地になると思うけど」
「だから、その状況がお互いのためにならない、お互いに苦しいだけだと思ったから別れたんでしょ。翔ちゃんは今だけの感情じゃなくて、もっと先を見てるんだよ」
唯は両手で頬杖をつきながら、小さなため息を落とす。
何と無く移した視線の先には、ご機嫌に酒を喰らい大笑いをするサラリーマン達の姿がある。
「一緒にいて苦しいかなんて、やってみないと分かんないじゃん。もしかして…実は、その白石とか言う女と付き合うつもりじゃないよね?」
「ミチル!あんた言って良い事と悪い事があるでしょ!翔ちゃんはそんな男じゃないよ。人を騙したり、嘘ついたりする事ができない誠実な人なんだからね!」
唯は頬を膨らませ、隣に座るミチルの太ももをパチンと叩く。
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