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「あー、お二人さん。勝手に盛り上がるのは良いんですけどねぇ、その誠実な男性に嘘ついて騙し続けた結果、見事に天罰を受けた惨めな女の存在忘れてません?確か今日は【傷心綾子ちゃんを慰める集い】じゃなかったか?」
私は空っぽになったビールジョッキを机の端に置き、店員目掛けてブンブンと手を振りおかわりの合図を送る。
「だって綾子、喋らずひたすら底無しに飲んでるからさ」
ミチルが苦笑いを浮かべる。
「飲むのも良いけど、ちゃんと食べなよ。ほら、血になる物を食べなさい」
唯は、刺身の盛り合わせと唐揚げのお皿を私の前に並べる。
「食欲ない。酒しか入らない」
「酒しかって…翔ちゃんと別れてから、ずっとまともに食べてないでしょ?あんた本当に大丈夫?」
「なんか…以前、結城先生と別れた時より重症な気がする」
唯とミチルが眉を寄せ、心配そうに私を見つめる。
「和馬と別れた時か…あの頃は翔太が側にいてくれたから。今は、心も体も空っぽになった感じ。この一週間、翔太を失った事実を頭では分かってても、心が受け入れてくれない。側にいて当たり前の人だった。もう会えないなんて、実感が無いんだよね…全然」
「失って初めて分かる存在の大きさと大切さか…。よく耳にする言葉だけど、よく耳にするって事はみんな同じ過ちを繰り返してるって事だよね」
ミチルはため息の後、枝豆の豆を指で摘み出しポンと口へ放り投げた。
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