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サーッ。
冷たい雨が僕の体を打ちつける。
辺りには、人の気配もなく、住み慣れていた街とは思えないほど荒れ果て、瓦礫の山を作っていた。
更には、道路の上には薄い水の層ができていて、多くの車が通っていた道路とは思えない。
「ヒックヒック…。」
誰かの泣き声がする…。
なぜだろう。聞いたことのない声のはずなのに、どこか懐かしい…。
その声は、徐々に僕に近づいてきた。
僕はその声の方に体を向けようとしたが、体は動かない。
まるで、金縛りにあったかのようであった。
ただ、虚ろに目の前に広がる暗雲が立ち込める空を見上げていた。
なぜ、僕が倒れているのかはわからない。
なぜ、街がこんなになっているのかはわからない。
でも、何か…何か、大切なことだと思う。
「ごめんなさい…。もう…あなたは戦わなくていい…。私一人で、やつを仕留めるわ…。」
その少女は、俺の顔を見つめて言った。
少女の容姿は、真っ黒な漆黒の髪と透き通った青色の目、整った顔立ちだった。
ああ、なぜだかわからないが、僕は彼女を止めなくてはいけない。
止めなくては、取り返しのつかないことになってしまう。
そんな気がしていた。
「それじゃあ…ね…。さようなら。」
少女は、軽く僕の唇に彼女の唇を重ねた後、ゆっくりと立ち上がった。
先ほどまで動かなかった首はゆっくりとたが動く。
少女の方を見ると少女は左手に太刀を右手に小太刀を持って、人間とは思えない跳躍力で瓦礫の彼方へと消えていった。
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