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眠っていたと周囲の諸々に気付かれないような、極限の角度を維持しながら、ゆっくりと視線を暗闇から現実にへと戻した。
整然と並んでいる木色の机を順番に追っていき、さきほどの転校生を見つけた。それが転校生ではなかったとしても、思考には問題無い。それが転校生じゃなくとも、青春の1ページを無駄にしたことにはならない。元々灰色なんだから(脳細胞のことではない)。青とはなんのことか。
転校生の姿をじろじろ見たところで、新しい仲間に心躍らせる男子生徒くらいにしか思われないだろうから、充分観察してやろう。
「趣味は何?」と聞かれ、答えると相手にダメージを与えそうな趣味が自殺志願者の趣味だ。「人間観察」だ。ああ、痛い。そんなことを聞いてくる相手はいないので大丈夫だけど。
さらさらで柔らかそうな長い黒髪。顔の小ささに比べ、大きい瞳――。なんてあえて特筆するような点を挙げてみるとこうなるが、「まぁ普通の良い娘だよね」という感想である。授業態度は熱心、華丸。シャシャシャシャと何か書いているのか、ノートにシャーペンを走らせている。黒板のモノではなかろうし、なんの類だろうか。
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