自殺志願者(ぼく)

5/23
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
 では「死ぬ」ことを理解するために、「生きている」に対する理解を試みるとしよう。  道端に落ちてるホームレスとかを見ると、「この人達はなんのために生きているんだろう」と考えたりする。  そんなとき大抵、脳内議論は「どーでもいいや」と結論するのだけど、自殺志願者の将来がもしこういうのだとすると、他人事ではなくなってしまう。しかし、ホームレスになるなんてありえないとも思う。現実逃避。  なぜ「生きている」のかの解答は、「死にたくない」からじゃないかと思い至る。  だけど、毎日自殺志願者とすれ違う人々が「死にたくない、死にたくない」と思いながら生きているとは思えない。  そんなひとがいたとすれば、むしろノイローゼかなにかじゃないだろうか。  じゃあ、人々は毎日を惰性で過ごしていることになる。  うん、そんな表現が正しいんじゃないか。  そんな惰性な生活を打破するのは「死」だとしか考えられない自殺志願者は病気かな。  そんな面白みのない屁理屈を捏ねくり回しながら、自殺志願者は何の変哲もない、けれどどこか安心する通学路の端を歩いていた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!