自殺志願者(ぼく)

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 朝礼が始まる前に着席して、机に肘をついて頬を支えながら、真っ白な天井を見上げる。  それくらいしか本当にやることがないからだ。  周りの連中はなんの意味もない雑談に興じている。  もしも、こいつらと一生のうちに喋る機会があったら聞いてみよう。  「お前らはどうして、そんなに群れるのが好きなのか」って。  そして、鐘が鳴り、朝礼の始まりを知らせた。  長い付き合いのはずなのに、まだ俺にとって名前が「そこら辺の有象無象」で固定されている女教師がやってきた。  若い女教師は、見知らぬ女子生徒を隣に連れている。  「見知らぬ」なんて言ったけど、同じクラスの誰かを連れてきたとしても、自殺志願者はそう感じるに違いない。  「馴染めていない」のではなく、「馴染まない」。  多層派への迎合を拒んでいる結果としてのこれだ。  だけど、自殺志願者は悲観などしていない。  「自分」が「自分」であるのなら、それは当然の結果だ。  わざわざ自分の個性を消してまで、集団に溶け込もうとは思わない。  「転校生を発表します」
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