第一話

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「はあ…はあ…はあ……ひいぃぃぃっ!」 いつまで逃げるつもりなのだろうか。 さっきまでとはまるで違う。 逃げる時までもうるさい奴だ。 「逃げても無駄。」 プライドの高そうなこの男は苦し紛れの一言を発する。 そんなバカみたいなマネする位なら、偉そうに見栄なんて張らなきゃいいのに。 「お、お願いだ!助けてくれ!!あれは仕方がなかったんだ!!」 その一言を私は聞き流す事が出来なかった。 「…人を、殺すことが、仕方ない?」 「それは…あいつらが…あいつらが勝手に自殺しただけじゃないか!」 この男… 殺すなという命令が無ければ、この手で消してやるのに。 「あんたが殺したのに代わりはない。直接手を加えてないにしろ、あんたのせいで死んでしまったのだから。」 「な、何を言うんだこの小娘がぁ!!」 この一言で大人は勝手だということを再確認。 このプライド高男が。 「強がっていられるのも今のうち。………ねえ、早く教えて。どこにある?」 「ハッ、誰がお前何かに言うか!」 ーーーピリリリ 私の携帯が鳴り響く。 任務の時はほとんどこんな展開になっているのだ。 「…もしもし?………うん、分かった。」 ピッ 私は携帯をポケットに適当に放り込んだ。 そして冷酷な一言を与えた。 「…あんた、もう要らない。」 「え…」 「もう分かっちゃったからーーー clockの場所。」 「ま、待ってくれ!俺は…」 死ぬ間際までうるさい男だ。 「さようなら」 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!」 任務は好きだ。 道理にかなっているから。 その上、ミツキに褒めてもらえるから。 コード番号0235、ユウキ。 それが私が唯一持っているもの。 唯一誇れるもの。 そして私はいつも任務の後呟く。 「任務完了」と。
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