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それに驚きまくる磯貝の嬉しそうな顔は、裕子を少しだけ癒した。
その喜びは裕子にもうつる。
食事の場所は、磯貝が行ってみたかったという創作イタリアンの店だった。
きちんとした身なりでなくとも誰でもウエルカムという店構えは、堅苦しいのが苦手な裕子の肌に合い、有り難かった。
入店する時には家族連れの客もいて、アットホームな雰囲気も感じる。
そして料理もなかなかのものだった。
さすがに疲れているためにアルコールを控えた裕子は、炭酸水を飲みながらそれらを楽しむ。
箸でいただける料理は心から美味しいと感じた。
「いいお店ね、値段も優しいし、磯貝さんを誘ってよかったわ。これからちょくちょく来ちゃうかも」
「そう言ってくれてほっとしましたー、どうかなって思ってたんですけど、さすがあたし! 当たり多いんですよー」
磯貝も美味しそうに料理に箸をつけていく。
しかし食べるのが早いな、と裕子は別の意味でも感心した。
一つは言わずとも分かるだろう、自己満足の発言だ。
「でも疲れてるみたいだったのに、よかったんですか? あたしは嬉しいんですけど」
「いいのよ」
食事は三食とるのは裕子のルールだ。
いかなる時でも食事を逃す事はない。
「ならよかったです! ちょっとでも気が晴れてくれたらあたしは満足ですし」
どこまで自己満足の世界で生きているのだろうか、そんな磯貝に裕子は笑うしかない。
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