小さな穴 黒×紫

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俺は昔っから幼馴染という名のそいつが嫌いやった。 小さい頃は泣き虫で。 ずっと泣いていたからついたあだ名は「雛」 泣き虫のそいつを見てずっとイライラして。 しばらく経って成長して、 泣き虫の頃なんて無かったみたいになって。 それでも皆の前では笑顔の仮面を貼付けて。 実はいじめられていたらしいあいつは 影で一人で泣いとった。 それにもなんかめちゃくちゃ腹立って。 それからまた時間は過ぎて 今は立派な社会人になっている。 それでも昔から全く変わらない。 可笑しいぐらい不器用で イライラするぐらい素直じゃない。 言ってやりたいぐらい上手く笑えていなくて アホみたいに嘘がヘタクソで。 そんなそいつをずっと見ていて イライラして。 「消えればええのに」なんて思ったりもした。 のに。 なんで「あの時手を引っ張ってやらなかったから」なんて 「俺のせい」なんて。 こんなに後悔しとるんやろ。 なんでこんなにお前が離れへんねん。 なんで。 「あの…どちらさん、ですかね?」 なんで。 「毎日来てくれて嬉しいです」 なんで。 「名前、なんて言うんですか?」 なんで。 こんなちっこい穴やのに。 ほんの小さな違和感やのに。 いつまで経っても埋まらへん。 end
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