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相変わらずの彼女の傍若無人振りにも、怒るどころか感慨深さを感じる。むしろそれでいいのだと去年あたりから妙な納得が出来るようにすらなっていた。
墓地近くにある山の中腹から街を見下ろす。遠くに夏祭りの喧騒を聞きながら頭上に浮かぶ満点の星空を眺めていると、不意に彼女が息をのむ音が聞こえた。
飛行機。
僕が今勝手に作り出した星座を横切るように飛行機が飛んでいく。
突然に立ち上がった彼女は、僕のシャツの裾を掴むと山を駆け下り始めた。暗くて足元がおぼつかないが、幽霊は夜目が利くのだろうか。
幽霊は疲れを知らないのかとも思ったが、そもそもこいつは生前から疲れなどとは無縁の体力バカであったからそれも当然か。
彼女がようやく手を離してくれたのは、僕らが高校時代に青春の七割程を費やしていた航空部の活動場所、つまりは甲斐南の旧体育館であった。
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