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どこから拝借したのか、それとも僕が知らない内に合い鍵を作っていたのかは知らないが、体育館の鍵をがちゃっと開けるとそのまま自宅にでも入っていくような素振りでおじゃまします。
ここに来るのは二年振りか。中にはある制作途中のモーターグライダーは、月明かりを浴びて仄かに光っているようだった。
勝手に乗り込もうとする彼女を制止しながら、この機体のデザインを知ってる事に気が付いて微笑する。こいつの優勝機体と同じモデルか、そりゃ乗りたくもなるよな。だが駄目なものは駄目。
しばらく口を尖らせていた彼女だが、ふと何か思いつくと外の体育館倉庫へ駆けていく。
倉庫の中にはグライダー一機とモーターグライダーが二機が、薄く埃を被りながら再び空を飛ぶその時を待っていた。
「私、また飛びたいな」
聞き間違えでなければ確かにそう言った。つまりこれは命令である。「さあ早く整備しろ」という事だ。間違いないむしろ間違いであってほしい。
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