夏モグラ

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   別れの時が近付いているのはお互い分かっていて、もう言葉でない意思疎通で最後の作業を進めていた。  彼女がコックピットに乗り込む。滑走路代わりの校庭には人影はなく、風も弱い絶好のフライト日和だ。  今まで毎年一緒にいてくれたのは、僕のためなのか彼女自身の為なのか。それを敢えて聞くことはしなかった。だから代わりに気持ちを伝えよう。 「今までありがとな」  指示灯の光が赤から青に。これが彼女への送り火だ。システム・オールグリーン、よいフライトを。  真っ白なその機体は、夏の青空を飛ぶカモメのようだった。きっとそのまま距離も分からないほど遠くへと飛んでいくのだろう。  陽が眩しい。  閉じた目を少しだけ開いて空を見上げると、もうどこにも彼女はいなかった。
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