第1章~プロローグ~

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 こんな性格は性格なのだが友達もそれなりには出来ていた。しかし、進級すると同じクラスで仲の良かった奴のほとんどが別のクラスになり中学高校ともに最終学年ではその自分のクラスに友達はおろかまともに口を利けるようなクラスメイトが居なくなってしまうのである。    学校側の自分に対する嫌がらせか、それとも何かの陰謀かとでも思ったくらいだ。もちろんその輪の中に入ろうとしなかった自分に非があるということは言うまでも無いのだが、特に人見知りの激しかった自分にとってクラス替えは恐怖そのものだった。  そんなこともあって大学を選ぶときの中に「友達が行くから」という良くある志望動機は組み込まれなかった。たとえ友達と同じ大学に行ったとしても同じ授業にまるっきり行く訳でもないだろうし、どうせ話せない奴なんて今までよりも山のようにウジャウジャ居るだろうと思ったからだ。    でも少し誤算だった、と言わざるを得なかった。まさかこの大学が自分のやる気をここまで削ぐような大学だとは思わなかったからだ。やる気が無いにしろそれなりに授業に興味を持てるかもしれない。  今までの授業形態と違うわけだし、自主性を求められるということに関して少なからず期待を持っていた面もあった。そして、いざ蓋を開けたらこれだ。意味のない必修の英語の授業(この年でまさかI have a penや Nice to meet youをリピート練習するとは思わなかった。)や    90分の講義のはずなのに70分の授業でしかないもの(タイムロスした内訳の半分くらいが教室間違いの学生や遅刻してくる奴がぞろぞろと入ってくるために進めようとしない教師)など豊富なラインナップで自分、善灯埼賢次(ぜんとうざき けんじ)のやる気ゲージを根こそぎ奪っていったのだった。
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