‡ 10年前 ‡

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  織人が差し出した手を、私は遠慮がちに握った。  織人は強く握り返してきた。 人を疑うことを知らない澄みきった瞳。 穏やかで優しくて、正直を絵に描いたような男の子だった。 当時ひねくれていた私には、妙に落ち着いていて、お人好しな子だなってふうにしか映らなかったけど。 『約束』なんてね──。 どうせ守られることも果たされることもないんだよ。 『約束』は破られるためにあるの。 織人だって私と『約束』したことなんて、離れてしまえばどうせすぐ忘れる。 私は何も信じない。 だから。 私は織人との『約束』という言葉に、何の感慨もなく簡単に頷いた。 そして、『約束』なんてすぐに忘れた。 中学時代の『好き』なんて次の日にはどうなっているか解らない、あやふやな『好き』だ。 ただ『恋する想い』に憧れて、誰かを『好き』だと思う自分に恋してるだけ。 そんなふうに冷めた目で周りを見ていた。 私はまったく可愛げのない女の子だった。   ・
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