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「真佑巳(まゆみ)くんとは順調?」
部屋のコタツに入った直子が訊いた。
ココアの香りが部屋じゅうに広がっている。
「うん?
順調ってどういう状態をさすの?」
私は、くわえ煙草でキッチンの椅子を換気扇の下に移動すると、どかっと腰かけて火を点けた。
「そりゃ、仲良くしてるかってことよ」
直子は、その小さい顔が隠れるほどの大きなマグカップになみなみと作ったココアをすする。
「お互い会いたいときに会って、ご飯食べたり遊んだりっていうのが仲良いってことなら、してるけど?」
「相変わらず素っ気ないねぇ」
「そ?」と、換気扇に向かって勢い良く煙を吐き出す。
「だってさ、相手は真佑巳だよ?
別れるときのこと考えたら適当につきあうのが得策でしょ?」
「別れるの前提?
可哀想な女」
「はいはい、そうだね。
ありがとう」
直子にバイバイするように手を振って、スタンド型の灰皿に煙草を押しつけた。
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