‡ いまの私は ‡

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  檀真佑巳(だん まゆみ)とは2ヵ月少し前に合コンで知り合った。 目の前に並んだ5人の中で、ダントツにチャラい印象だった。 名前からしてホスト。 ──ダンマユミが本名だって言うから笑える。 絶対コイツは口から生まれてきたんだってくらい口が巧くて、綺麗な笑顔が胡散臭くて、いい匂いをぷんぷんさせていて。 間違いなく泣かされる。 間違っても信用できない。 そう思いつつ横目でにらんでいたら、『オレとつきあわない?』と直球をぶつけられた。 『なんで私?』って聞くと『オレに興味まったくなさそうだったから』と、あの胡散臭い笑顔で応えた。 『女関係でモメたくないから断る』と言うと、真佑巳は楽しそうに天井を仰いで笑った。 そのとき、なぜか一色織人の笑顔を不意に思い出した。 10年ぶりに唐突に。 こんなチャラい男の笑顔と、織人のおっとりとした笑顔がどうして重なったのかは自分でも解らない。 『そんときは別れていいからさ』と、いとも簡単に真佑巳は言った。      
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