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直子とは違った意味で、好意を持てる人間だと思えた。
オレはチャラい、まったく誠実ではないとつきあう前から宣言してるこの男とつきあってみるのもいいと思った。
どうせ私は何も期待しないから。
直子は同じ席で、渡部繁規(わたべ しげのり)という男に見初められた。
真佑巳と同じ26歳。
学生時代は剣道一筋で、彼女いない歴26年。
そして未だ記録を更新中という貴重な硬派男だった。
見た目はけして悪くない。
笑うと目がなくなり真っ白い歯がきらりと輝く、真佑巳とは正反対の実直そうな印象の男。
「直子はどうなの?
渡部くんと」
直子の向かい側からコタツに脚を差し入れながら聞いた。
直子はカップで口を隠した。
「うん。
……すごく好き、かな」
直子の表情が『女の子』になる。
「そりゃよかった」
充分伝わった。
──幸せなのね。
直子にはずっと笑顔でいてほしいと素直に思う。
こんな面白みのない女を友達として受け入れてくれた。
それだけで感謝してるから。
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