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「なんで?」
私は真佑巳の胸に頬を押しあてたままで聞く。
「なんで、って……イヤだったろ?」
「嫌っていうか、正直驚いた」
「……ごめんな」
神妙な声で真佑巳は詫びる。
「やめてよ、真佑巳らしくな──」
言い終わらないうちに、今度は腕を強くつかんで引き剥がされた。
「オレらしいって!?
アキラはオレをどんな男だと思ってんの!?」
「……」
厳しい顔。
まるで何かに追い詰められてるみたいな。
「前の女にヨリ戻そうって言い寄られても、知らん顔して……いざバレたら開き直って言い訳も謝りもしない。そんな男か!?」
「痛いよ。離して」
真佑巳の腕を振りほどいて、ほんの少し後退りする。
距離を置いて真佑巳を見ると、私に対して苛立っているんじゃなく、自分自身に対して苛立っているんだと解った。
真佑巳は唇を噛んでうなだれる。
そして、また小さく「ごめん」と言った。
「今まではさ、オレ、女の気持ちなんて考えなかった。
謝ったことなんかなかったし、弱気になったこともなかった。
嘘もついたし、心にもないこと言って女の機嫌とるのも平気だった。
自分がそういう男でも、罪悪感も何も感じなかった。
でもな、アキラに対しては違うんだよ。
自分でも解らない」
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