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「謝ってきて、それで?」
素っ気ない私の問いに、真佑巳はぐっと喉を鳴らして言い淀んだ。
──続きは容易に想像できるよ。
私の車の横で、真佑巳の腕を思い切り引いた時の珠希のあの顔。
必死に媚びて、すがりついて、女を全面にアピールしていた。
嫌悪を覚えた。
真佑巳はまだ黙っている。
だから私が言葉を引き継いだ。
わざと抑揚を押さえ、ゆっくりと。
「……一方的に別れるって言ってごめんなさい。
離れてみたら、やっぱり私、真佑巳のことが大好きだったんだって気付いたの。
忘れられなくて苦しかった。
もう一度やり直してくれない?──こんな感じ?」
真佑巳は目を見開いて私を凝視してる。
あーぁ。大当たりか。
なんか……有りがちすぎて拍子抜けだ。
「そうなんだ? いいよ。私のことは遠くに置いといて。
真佑巳の答えを正直に話して。
喉乾いちゃった。コーヒー入れてくるね」
真佑巳が気持ちを整理できるように、私はその場を離れた。
──真佑巳はあのコになんて答えたんだろう?
付き合っていた時、真佑巳は珠希が好きだったんだ。
真佑巳から嫌いになって別れたんじゃない。
涙をうるうる潤ませて懇願されたらどうだろう?
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