9人が本棚に入れています
本棚に追加
真佑巳は基本的に優しい。
たぶん私より何倍も優しい。
彼女に対してもう愛情はなかったとしても、やり直したら案外うまくいくかもしれない、なんて考える気がする。
さて。
腹をくくるか。
まだ私たち始まったばかりでよかった。
湯気のたったカップを両手に一つずつ持って、居間に戻る。
真佑巳は所在なげにテーブルの上の梅しばの袋をいじっていた。
「はい。お待たせ」
「おう。サンキュ」
「……あと私が聞きたいのは、真佑巳がどう答えたのかだけだよ」
私はそう言ってコーヒーをすすった。
真佑巳もゆっくりコーヒーを飲んで、カップを置く。
「珠希とはもう戻らない」
硬い声で真佑巳は言った。
──え? 嘘。
不謹慎にも、私は心の中でそうつぶやいた。
「あいつは誰でもいいんだ。
泣いてたけど、オレを思っての涙じゃない。
昔のオレならあんな涙見たらクラッときて、部屋に連れ込むなんてアホなことしてたかもしれないけどな」
「誰でもいいんだってどうして解るの?」
「あいつと別れた理由はな……あいつがオレの同僚に乗り換えたからだ」
「嘘ッ──」
今度は口からついて出た。
──乗り換えるってなんだ?
車じゃなくてさ、人だよ、人!
最初のコメントを投稿しよう!