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その電話があったのは、真佑巳の部屋に初お泊りした2日後の月曜の夜だった。
知らない番号だったから2回着信をやり過ごし、3回目で出て無言で様子をうかがった。
『……相馬、陽さん?』
穏やかでよく通る、耳に心地よい声だった。
それでも警戒心は解かずに耳をすます。
『あの……相馬さんですよね?』
「……そう、ですけど」
『よかった! 出てくれて。一色です。久しぶり』
「──織人?」
『うん。
なんか不思議な感じだ。
僕のなかの陽は、中学生のままの陽だから。
あ、陽って呼んでもよかったのかな?』
律儀な織人。
私は何も考えず、しっかり織人って呼んでるのに。
自然に頬がゆるんだ。
「声変わりして、男らしくなったでしょ?」
『あはははは』
私の冗談に織人はホントに楽しそうな笑い声をあげた。
好感度を上げる模範みたいな爽やかな笑いかた。
丁寧な物言い。
まったく変わらない優等生の織人。
織人は週末にこっちに戻ってくると言った。
逢いたいと、あらたまって言われた。
私もすごく懐かしくて、純粋に逢いたいと思った。
日曜の午後に逢うことに決めて、電話を切った。
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