‡ 優しさと嘘 ‡

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  「オレがなんだよっ!?」 真佑巳が怒鳴った。 初めて──真佑巳が怖いと思った。 『殴られるんじゃ?』とかそういう怖さじゃない。 好きだと言った相手を、こんな冷ややかな……冷ややかだけど火傷させそうな目で見るんだって。そういう怖さ。 でも、怯(ひる)んじゃ駄目だ。 私はテーブルの上に身を乗り出した。 「真佑巳言ったよね。 珠希には二度と絶対関わらない、信じてくれって。 ……珠希と話したんだよね? 直接会って? 電話で? どっちにしろ約束破ったってことだよね!? どうして私だけ責めるの? 謝ったじゃない! 正直に言ったじゃない! なのにどうして──」 ──違う! こんなこと言いたいんじゃない。 真佑巳を責めたいんじゃない。 本当は……本当はあるんだ。 私の中に、やましい気持ちが。 織人に逢えて嬉しかった。 織人に『ずっと好きだった』と言われて心が揺れた。 それを真佑巳にはけして言えないと──一生言わずにいようと思っている。 正直に話してなんかいない。 私は、ずるい──。 でもいまさら、あとには引けなかった。 「オレは約束を破ってなんかない」 真佑巳が低く響く声で言った。  
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