‡ 優しさと嘘 ‡

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  「簡単に嫌いになったとか聞くなよっ!」 真佑巳は私の手を振りほどき、テーブルの上に身を乗り出して、私の首に手をかけて引き寄せた。 「あ──」 「嫌いになんかなるもんか! そんないい加減な好きなら、こんなイライラするかよっ!」 私の頭を抱えこんで、ぐいぐい揺さぶりながら言う。 「痛いよ、真佑巳っ」 「あ、悪い」 ぱっと身体を離した真佑巳は──照れくさそうに笑っていた。 たった数分間の諍(いさか)いで忘れかけてた、私の大好きな笑顔だった。 こらえていた涙が一気にあふれ出す。 「……真佑巳ぃ」 「あ、待て! 泣くな──アキラ」 真佑巳はテーブルを横に押しやって、私の手を引く。 「いやだ、離せバカっ。 真佑巳っ──怖かった。 怖かったんだからっ」 私はしゃくりあげながら、真佑巳の胸を両手で押し戻す。 「ごめん!──怒鳴ってごめん」 真佑巳はそっと私の腕をとって、その胸に私を抱え込んだ。 私の背中を、真佑巳の温かい手のひらが上下に行ったり来たりする。 「本当にごめんな。 オレ、自信なくてさ……」 真佑巳は、私の髪に唇を押しあてたまま言った。   
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