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「あの女に、アキラが男と逢ってるって聞かされて……。
『何ふざけたこと言ってんだ』って笑い飛ばせなかった。
オレとアキラを喧嘩別れさせるための嘘だって、思いたいのに思えなかった。
アキラがオレの彼女だって実感があんまなくてさ。
アキラは、まだオレに心許してくれてないって気もしてて。
要は……アキラのオレに対する愛情に自信が持てないってことでさ。
だから、あいつからアキラが男の前で泣いてるって聞いたら、たまらなくなった。
オレじゃない男の前で泣くのかって」
「……ごめんっ」
私は真佑巳の腕をほどいて、自分から真佑巳を抱きしめた。
「謝るな。
笑ってくれ。
オレ、本当はめちゃめちゃ臆病なんだ。
あいつの言ったことは嘘だ、絶対嘘だ──そう思いながらも疑いは捨てきれなかった。
アキラが、オレに嘘ついて男に逢ったって聞いて……もうどうすればいいのか解らなくなってさ」
「うん……」
真佑巳の頼りなげな声が胸に痛い。
私は真佑巳がしてくれたように、広い背中をそっとさすり続ける。
「好きなんだ……本当に。
好きなら信じなきゃって思うのに、すごく好きだから不安になるんだ」
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