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「アキラ……」
真佑巳の目はとても真剣だ。
おちゃらけモードはおしまいらしい。
「はい」
だから私も神妙に返事をする。
鼻が触れ合うほど近くで、真佑巳は小さく喉をならし遠慮がちに言った。
「……オレのものになって」
「…………」
──オレのものになる……。
それって、『する』ってことですね?
まさかこんな流れになるとは思っていなかったから、私の身体が瞬時に硬直した。
「いやか?」
真佑巳は私の様子を敏感に察して、情けなさそうに眉を下げる。
「いや──嫌というわけじゃなくて、さ。
ほら、今日はちょっとごたごたがあったし、私仕事帰りで汗かいてるから汚いし……」
「気にしない」
「う……」
そんな潤んだ目で見ないで。
期待とかしないで。
「まだオレが怖い?」
私は首を激しく横に振る。
ううん。怖いんじゃないんだよ。
ものすごく心臓ばくばくいってるけど、この前みたいな恐怖感とは違う。
心の準備がまるっきりできてないから慌ててるだけ。
真佑巳は私の手の甲に、そっと手のひらを重ねる。
どくんと一層鼓動が跳ねる。
「アキラともっと近づきたい」
「……うん」
「いい?」
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