‡ 優しさと嘘 ‡

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    「あれ? 真佑巳……?」 またしっかりと洋服を着込み、部屋に戻ると、真佑巳の姿がなかった。 「真佑巳? トイレ?」 「……こっち」 寝室から真佑巳の声がした。 ──え? 準備万端? 頬に、かぁっと熱が集まる。 少しだけ開いている引き戸をそろそろと開けて、「お邪魔します」と忍び足で寝室に入る。 真佑巳は照明を落とした薄暗い部屋の、ベッドの端に腰掛けていた。 「なんだ、裸のままでよかったのに。どうせ脱ぐんだから。 あ、そっか。 オレに脱がせる楽しみをとっといてくれたんだな」 「からかうな!」 暗がりに慣れない目では、真佑巳の表情がよく伺えなかったけど、とりあえず頭をこづいておく。 「あはは。おいで」 真佑巳は私の手をとって隣に座らせた。 薄灯りに縁取られた真佑巳の横顔が、なぜかとてもこわばって見える。 「真佑巳がそんな顔しないでよ。よけい緊張するから」 「そんな顔? どんな顔よ?」 おどけて顔を寄せてくるけど、やっぱりどこかおかしい。 「怒ってるみたいな……」 「気のせいだって。オレだって緊張するさ」 「嘘だ。真佑巳が緊張するわけなっ──」 『もう黙れ』というように、真佑巳の唇が乱暴に私の唇をふさいだ。  
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