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昨日今日と、織人のことをどう話そうかずっと考えていた。
逢ったという事実を隠すつもりはない。
けれど、真佑巳が珠希のことを話すのをためらったように、私もどこまでを正直に話すべきなのか。
知らなくてもいいことまで話して、嫌われたくはないから悩んだ。
そして気になることがひとつ。
『オレはあいつとは二度と関わらない。信じてくれ』
『好きだから嘘はつきたくない』と言った真佑巳が、もし──珠希と逢って、もしくは電話で私と織人のことを聞いたのだとしたら……。
真佑巳は私に隠さず、そのことを話すだろうか?
結局、頭の整理も心の整理もつかないまま火曜の夜になり、私はカレーの材料を買って真佑巳のアパートのドアフォンを押していた。
「はいよー」と声がしてドアが開く。
真佑巳は笑顔で迎えてくれた。
ちょっと疲れた顔をしているのは仕事を頑張ってきたせいだろうと、自分に都合のいい理由をつける。
「こんばんは」
「おう、きたか。
悪かったな。アキラも仕事だったのに。疲れてるだろ?」
「いや。平気だよ」
「あがって」
「うん。お邪魔します」
真佑巳は「邪魔じゃないすよ」とおどけて言って、ドアを閉めた。
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