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「あはは。やっぱアキラだ。
『ううん。大丈夫よ真佑巳。こんなに幸せなんだもの気にしないで』とかなんとかしおらしいこと言えば? こういうときくらい」
「は? 気持ち悪いでしょ?
私がそんな台詞吐いたら」
「ふん。確かに。
そろそろ行くか?」
「うん」
真佑巳の腕枕は本当に心地よくて、このまま離れたくなかったけど帰らないと。
お泊り、朝帰り、死んだような顔して出勤っていうのは避けたかった。
私は、潔くベッドから降りて素早く身繕いをした。
真佑巳もけだるそうにしながら起き出して、衣服を着込む。
居間でバッグから携帯を取り出し、チェックした。
「あ、直子からメールきてた」
「なんだって?」
髪を手櫛で整えながら寝室から出てきた真佑巳が聞く。
「『お泊りですかぁ?』だって」
「はい、そうですって返せよ」
「バカ。意地でも帰ります」
「もう、ツレナイ」
「思ってもないことを」
私たちは、顔を見合わせてくくくと笑いあう。
[遅くなってごめん。もうすぐ帰る]と直子に返信した。
「じゃあ、行くね」
切なさを振り切るように、真佑巳の肩をぽんと力強く叩いて玄関に向かう。
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