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電話を切ったら涙が止まらなくなった。
真佑巳の『愛してる』を信じたい。
でも……車に残された『消えて』という無言の脅迫が、真佑巳の愛情を受け取ることを拒む。
一度は治まった震えがぶり返してきた。
このまま運転して帰る自信がない。
私は直子に電話を入れた。
『はーい。どうしたぁ?』
直子の間延びした呑気な声に、よけいに涙があふれてくる。
「……ごめん、直子。迎えに来て」
『あんた、泣いてんの!?
なにがあった!?』
「とにかく迎えお願い。来てくれたら話すから」
『解った! すぐ行く』
「ホントにごめん。ありがと。
温かくして来て」
電話を切ると同時に運転席のドアがノックされ、窓ガラスを心配そうに覗き込んでいる真佑巳と目が合った。
「真佑巳──!?」
急いでドアを開け外に出た。
「車出さないからさ。心配になって……」
たぶん、真佑巳はすべてが解ったんだろう。
私の顔は涙でぐちゃぐちゃだったし、洗車してないから、汚れたリアガラスに残る文字も読めたはず……。
私は無言で真佑巳の首にしがみついた。
「ごめん! ごめんな。
いやな思いさせて本当にごめん!」
真佑巳は私を抱きしめたまま、ずっと『ごめん』と繰り返していた。
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