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真佑巳は一瞬顔を上げて、何か言いたそうにわずかに口を開いた。
私はその唇を息を止めて見つめる。
──真佑巳。何か言って。
『嘘ついたのか?』でも『浮気してたのか?』でもいいから。
けれど真佑巳は唇を噛み、うつむいてしまう。
──私のせいだ。
こんな真佑巳、見たくない。
「……真佑巳。
勘違いだったらごめん。
珠希ってコに何か聞かされたんじゃない?
日曜の夜、私に電話で聞いたでしょ?
一緒に食事した友達に彼氏いるのかって。
あれは……私が本当に職場の女友達と一緒だったのか確かめるために言ったんだよね?」
思わず、膝の上のこぶしに力がこもる。
真佑巳はマグカップを両手で握りしめていたが、やがてうつむいたまま小さく二度うなずいた。
「やっぱりそうか……。
真佑巳、お願い。顔上げて」
のろのろと頭を起こした真佑巳の目を、私は真っすぐに見据えた。
「嘘ついてごめん。
中学の同級生と逢ってた。男の人……」
「──」
真佑巳の瞳が大きく左右に揺れ出した。
それに呼応するように、私の心臓も破裂しそうなほどドクドクと脈を刻む。
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