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こめかみにもズキズキと脈動を感じながら、私は一気に言葉を吐き出した。
「小中学校と一緒だった人なんだ。
中学のとき石川県に引っ越したの。
几帳面な性格な人で、年賀状もらったりしててね。
こっちに戻ってくることになったから一度会えないかっていう手紙もらって……。
この前話したでしょ?
田浦って男のこと。
あのとき、みんなは田浦が怖くて見て見ぬふりしてたけど、その人だけがかばってくれたんだ。
本当の犯人も探しだしてくれた。
私、ちゃんとお礼してなかったから、ちょうどいい機会だなって……。
直接会ってきちんとお礼して、けじめにしたいって思ったんだ。
真佑巳のこと話したよ。
『彼氏できてよかった』って喜んでくれた。
彼氏がいるなら、もう連絡しないって言ってくれた。
私も会うのは一度きりって決めてたし、わざわざ真佑巳に言うこともないと思って。
よけいな心配かけたくなかったし。
でも……やっぱり話せばよかったよね。
ちゃんと話して、真佑巳が会うなって言えば会わない、そうすればよかった。
そしたら、こんなややこしいことにならずに済んだのに。
本当にごめん!」
私は、けしてやましいところはないということを、胸を張ることで真佑巳に示した。
そして深く頭を下げた。
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