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「アキラ!」
真佑巳は私のそばに屈みこんで、頬や肩や腕にせわしなく手を当てた。
温かい……。
涙出そう。
「どうした、アキラ。大丈夫か?
珠希──。
おまえ、何したんだよ?」
アパートの住人に迷惑にならないようにと思ったのか声を落とし、それでも怒りに満ちた声で言う。
「ちょっと腕を引いただけなのに、勝手に転がり落ちたのよ」
動揺でうわずった珠希の声が、頭上から聞こえてくる。
「落ちた……?
階段から落ちたのかアキラ?」
「……うん。
運動、神経……鈍いから……立て直せなかった……ははは」
「馬鹿。こんなときにふざけるな。
頭は? 頭は打ってないか?」
「……たぶん」
「あたしのせいじゃないからね!
その女が真佑巳と別れないから悪いのよっ!」
珠希は叫ぶように言うと、よろけながらその場から逃げ出した。
「待て、珠希!」
「いいよ、真佑巳──」
珠希を追いかけようとする真佑巳の手を、やっとの思いでつかんだ。
「ごめん。
またオレのせいだ。
アキラをこんな目に遭わせて……。本当ごめん。
急いで病院行こう。
救急外来やってるとこ解るから」
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