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真佑巳が心底悲しそうな顔で、私の髪を撫でる。
その仕草はよけいに私を辛くさせた。
「冗談。
あちこち痛いけど、足首と腰が特に痛い……」
「じゃあ……ゆっくり抱き上げるからな。つかまって」
「あ、待って。
直子が車の中で待ってくれてるんだ。
いつも私が停めてる場所。
呼んできてもらってもいい?」
「直子さん、来てるのか?
解った──」
真佑巳の言葉の途中で、路上をコツコツと歩いてくる音がした。
不規則な足音だ。
たぶん一人じゃない。
「アキラっ!」
直子だった。
そして直子の斜め後ろには、珠希が唇を尖らせて立っていた。
直子の手は、珠希の手首をがっちりと掴んでいる。
「血相変えて走ってるの見えたからさ。
こりゃなんかあったな、と思って追っかけて捕まえた。
そしたらアキラが階段から落ちたって言うから。
アキラ、大丈夫?……じゃないな」
「……ははは。駄目かも」
私は弱々しく笑った。
「直子さん、オレ今からアキラを病院連れて行くから」
真佑巳はそう言って、珠希に視線を移した。
「珠希。アキラに謝れよ」
「…………」
珠希は、ぷいと横を向いてしまう。
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